欧州の「病人」から「優等生」になったドイツの労働市場改革から日本が学べること

現在はユーロ圏の優等生で安定した経済成長を遂げているドイツですが、ドイツは実は東西ドイツ統合後の1990年代には経済は停滞していて、「ヨーロッパの病人(The sick man in Europe)」と呼ばれていました。

当時のドイツでは失業率が高く、失業保険の支払いが国の財政を圧迫していました。失業者が多かった背景の一つは、当時のドイツの労働市場がフレキシブルさに欠けていたこと、つまり、企業がスキルの低い従業員を解雇して有能な人材を雇いにくかった、などということがありました。また、ドイツの失業者自身が、失業保険がもらえたことからあまり真剣に就職先を探そうとしなかった、というケースも多かったのです。

そのドイツが、2000年代に労働市場改革を進めて、失業保険を事実上削減したり、より多くの企業が柔軟に人員調整できるように法律を整えたり、ハローワークのような職業紹介所がより効果的に仕事を斡旋できるようにしたり、個人の起業を支援したりしました。

その結果、ドイツの経済のポテンシャルは高まり、2010年代には安定して高い経済成長を遂げられるようになりました。

では、日本はどうでしょうか。

経済が成長するには、実際に働く世代である労働人口が必要ですが、少子高齢化が進む日本では、労働人口がこれから減ってゆきます。

他方、日本経済はここ30年近く低成長(あるいはマイナス成長)であり、一人一人が効率的に働く指標である「生産性(労働生産性)」も他の先進国に比べて低くなっています。

働く世代の人口が減り、生産性が低い状況で日本が目指すべきなのは、労働生産性を高めることです。実際、現在進められている「働き方改革」は労働生産性を高めるための政策です。

日本でも、もっと労働市場がフレキシブルになって一人一人がより効率的に働くようになると、もっとポテンシャルが発揮できるはずです。

Photo: Ansgar Scheffold