この「子育てを最適化するには」のシリーズでは「子供とゲームやテレビのルールを決めてもなかなか守れなくて、自分自身も仕事や家事で忙しいのでどうしたらいいのでしょうか」というご質問にお答えする形でお話しています。その1、その2も併せてご覧ください。
前回は、子供のゲームやテレビというコンテクストで、どのような子育てスキルを使えるかというお話をしました。
ただ、子育てスキルというのは、子供相手の対人スキルであり、理論通りには行かないこともあります。そういう時にどうしたら良いのでしょうか。まずは、前回の「その2」でも書きましたが、新しい子育てスキルアプローチというのは最初はうまくいかなくて当たり前、半分でもできれば上出来だと考えて、繰り返し行っていくことです。
では、繰り返し使ってみてもやはりうまくいかないという時にどうしたらいいのかという話をします。具体的には、①子供と一緒に問題解決するということ、②環境を整えること、③長い時間軸で親子間の問題を考えること、④ソリューションスペースを拡大して広範な解決方法をさぐること、ということをお話しします。
1.問題解決
これは、育児スキルがうまく行かないときに使われる方法で、実は、この問題解決のアプローチは幅広い年齢層で使うことができ、2歳くらいから使うことができます。
どの年齢のお子さんでも、基本方針は、状況を説明して、子供の気持ちを受け入れたうえで、問題解決を図ることです。
例えば、就学前の幼少期のお子さんの場合、「テレビを30分と決めているけれど、〇〇ちゃんはもっと見たいんだね。見たい番組をもっと見られないのは悲しいよね。問題はね、テレビをあまり見てしまうと、夜になって寝る時間が遅くなってしまうのよ。そうしたら、明日、幼稚園でも眠たくなってしまう。」などです。
就学時以降のお子さんでも、状況を説明して子供の気持ちを受け入れつつ、子供の要求(例えばゲームをもっとしたいなど)は受け入れられないとしたうえで、一緒に問題解決を図ることです。 「How to talk so kids will listen」の著者FaberとMazlishは、問題解決の方法を親子でブレインストーミングして全て書き出して親子で話し合うことを勧めています。紙やホワイトボードなどに書き出すことでで、色々なアイディアもわいてきます。
このブレインストーミングの過程で、でお子さんが抱えている日頃の不満が出てくるかもしれません。例えば、「ママはスマホを見放題なのに、どうして僕だけゲームを我慢しなければいけないの?」などです。
このように、「でも、ママ(パパ)はそうしているでしょ?どうして僕だけ?」というモヤモヤした気持ちを子供が抱えている時にはどうしたら良いでしょうか。残念ながら、親は自分自身ができないことを子供にさせることは出来ません。つまり、この場合、親自身がスマホに制限をかけるといった自己コントロールを先に行って規範を示したうで、子供にゲーム時間をコントロールするといった自己コントロールを求めるしかないのです。(私は、ここが「子育ては自分育て」と言われる所以でもあると思っています。)
2.環境を整えること
環境を整えることが子供に協力を促すことができるようになることは多いです。子供は、テレビやゲームやお菓子といった誘惑には弱いもので、特に小さい子供に「意思の力」で我慢させることは非常い難しいです。こうした時には、環境を整えることです。
例えば、テレビを見ていないときにはテレビを隠す(扉付きのテレビボードや、布を覆っても良いです)、ゲームであればゲーム終了後にゲーム器具を見えない場所にしまう、お菓子も見えないところに置く、ということです。
その上で、テレビ・ゲームの代替となる活動が(読書など)をしやすいように、そういった活動を促すもの(本など)は見えやすいところに置くのも良いです。
この環境を整えるということは特に幼少期の小さなお子さんには非常に有効なことです。実際、ベビーゲートなども環境を整えることの一環です。
3.長期スパンで考える
子育てへのアプローチは、短期的にできることと長期的な視点が必要なものとがあります。
短期的なアプローチとは、このメルマガで度々お話ししている子育てスキルです。子育てスキルをうまく使うことで、効果的な子育ても実現できます。他方、長期的なアプローチとは、長期的に子供との絆を深めたり、子育てには時間が解決するものもあると認識することです。
1日5分でも良質な親子の時間を持って長期的に親子の絆を強めていると、親の言うことに聞く耳を持ち、結果として親に協力的になることも多いです。また、子供との関係が良くなり、仮に親がついイライラしてしまったり怒鳴ってしまった場合でも、子供はそれを受け入れる余力が出やすくなります。
また、子育ての悩みは子供の成長と共に解決することも少なくないので、今はうまく行かなくても「時間が解決」することもあります。
4.ソリューションスペースを拡大し、より広範な解決の方法を探る
ソリューションスペースを拡大させるとは、問題解決のための選択肢を広げ、より広範な解決の方法をさぐることです。
例えば、先日、アメリカ人児童心理学者が書いた育児書を読んで、その著者の率直さに驚きました。
何かといいますと、「この本で提示する方法では、解決できない問題もある。そういう時は、専門家に相談するのが良い」とその本の最後の部分で述べていたことでした。
多くの育児書が「こうすれば親子問題・子育て問題は解決する!」と断言しているなかで、私はそのアメリカ人児童心理学者の率直さに驚き、とても腹落ちしました。
お子さんは一人一人違うので、他の人の方法が全ての子育てに当てはまるわけではありません。ですので、必要な時には専門家に頼ると解決することも多いと思います。
このように、専門家に頼るというのも、ソリューションスペース解決につながります。
子育てには色々な悩みや葛藤、試行錯誤がつきものですが、自分自身と子供を信じて、子育て期間を楽しく過ごしたいものですね。