今年11月のアメリカ大統領選まで3か月弱となり、民主党大統領候補のバイデン氏が、彼と共に選挙戦を戦う副大統領候補を来週にもアナウンスするとされています。
彼は女性を抜擢することをコミットしているので、バイデンが今回当選すれば、アメリカ史上女性初の副大統領ということになります。バイデンがそうコミットした背景には、女性を活躍させたいという彼自身の思いや社会的なプレッシャーがあったのだと思います。
私が最初にアメリカに渡ったのは私が20代の後半の頃でした。
当時の私は、日本で働き始めて何年か経った頃で、男性優位社会での息苦しさを感じていました。そんな私が見たアメリカ人女性は堂々としていて、日本よりもはるかに自由で、女性が生きやすい国なんだなぁとカルチャーショックを受けたことを鮮明に覚えています。
それから何年も経って、私はこれまで通算10年以上アメリカで暮らしアメリカ人と結婚してアメリカの永住権を持っています。
そんな私が思うのは、アメリカで女性が本当に男性同様に活躍するまでにはまだ至っていないということです。
なぜでしょうか。
私は、2つの点があると思います。
1つ目は、女性が活躍することを良く思わない男性・女性が依然としてアメリカにも存在していて、それが女性の活躍を阻んでしまい、アメリカでも女性が社会で活躍する際に「ガラスの天井」となってしまっていることです。
アメリカでは保守層が根強く存在していて、保守層の多くは、女性がある程度活躍することは容認できても、女性を、大統領含めたリーダーにするということを認めるまでには至っていません。
2つ目は、女性自身が、無意識のうちに自分の中で制約を作ってしまったり自信が持てなかったりすることがあるということです。
米Facebook社の幹部のシェリル・サンドバーグの自伝「Lean in」でも書かれていますが、彼女のように華々しい経歴や学歴があり米大手社でバリバリ活躍している女性でも、女性ということで自分の能力に無意識のうちに限界をつくってきました。
例えば、サンドバーグがハーバードの大学生だった頃、彼女の女友達と彼女の(一つ下の)弟とが同じクラスをとっていただき、弟はほとんど勉強しておらず、彼女と女友達は猛烈に勉強して試験に臨みました。そのクラスの最終試験の後で弟は「僕はすごくできたと思うよ」とさらっと言ってしまったのを聞いて衝撃的だったそうです。サンドバーグと女友達は自分の自信のなさからが猛烈に勉強しなければいけず、他方、弟はそこまで準備もせずに臨み、結果的には皆同じ成績をとってしまったそうです。
さて、この「女性の活躍への壁」はいつまで続くでしょうか。どうすれば、女性は自分のなかでの限界を設けず自由な発想で人生を切り開けるでしょうか。次世代にはそんな壁や限界も存在せず、女性が男性と対等に活躍できるでしょうか。
私は、それは十分可能だと思いますが、それを実現させるためには、私たちが、努力し働きかける必要があると思います。
例えば、私には6歳の息子と3歳の娘がいます。6歳の息子に比べて、娘は性別を理由にした制約に直面することが多いです。
例えば、昨日はヨルダンでイード(犠牲祭)と呼ばれる大きなお祭りがあって、こちらの伝統として、イードの日には皆が精一杯おしゃれをして出かけます。6歳の息子が選んだ服は、普通の襟付きシャツで、3歳の娘が選んだ服は、トラックのプリントのTシャツとジーンズでした(娘はボーイッシュなものが好きです)。私は「あまりイードらしくないなあ」と思いつつも娘の意思を尊重し、娘にそれを着させました。
案の定、娘は年配の女性(その女性はアメリカ人ですが)から「せっかくの特別なお祭りの日なんだから、女の子らしいものを着ようね」と言われ、他方、息子は「良いシャツを選んだね」と絶賛されていました。
これは一例ですが、現代社会において、子供向けのテレビ番組や絵本でも、社会的に「女性はこうあるべき」ということが暗に示されることは少なくないです。結果的に、女の子は無意識のうちに女性ということで何らかの制約を自分に設けてしまう可能性もあると思います。
ですので、次世代での女性の活躍も、私は成り行き任せでは進まないと思っています。大人の世代が自己反省して、将来を担う女性が活躍できる社会をつくるよう、私たちが努力して働きかける必要が依然としてあります。