前回の記事では、オンラインやテクノロジーを用いた教育の良いところをお話ししました。
この記事では、オンラインやテクノロジーを用いた教育の問題点についてお話しします。
1.子供のスクリーンタイムが大幅に増えてしまうこと
オンライン教育の問題点としましては、1つには子供はどうしてもスクリーンTimeが増えてしまい、特に自己コントロールをしにくい低年齢の子供にとってはスクリーン依存症になりやすいと言うことです。そして、親や学校が年相応のルールを設けるなどをしない場合、子供に害になってしまうこともあることです。
比較的早くから多くの学校でタブレットを用いてテクノロジーを導入した学習が行われていたアメリカでは、タブレット利用が爆発的に広がる一方で、その揺り戻しもでき出てきていました。具体的には、少なからぬ学校が、テクノロジーを用いた教育のあり方を見直し、タブレットでの利用を制限するといった方策をとることになりました。
これは、子供は発達上、タブレット中毒などになりやすいので、そうなってしまうと子供たちの大半の時間がタブレットやPCスクリーンに費やされてしまい、五感を用いた学習や身体能力の発達を妨げてしまうからです。
例えば、私が2年前まで住んでいたアメリカワシントンDC近郊の地区では、数年前から、セカンドグレード(日本でいう小学校2~3年生)以上の子供にはアイパッド(アップル社のiPad)を一人一人に与えるという方針を取りました。
ところが、特に学年の低い子供にとっては、アイパッド中毒になってしまうといった問題が発生しました。
それでも、その地区の中の、親の意識の高いような学校では、PTAで取り決めてタブレットの使用時間を制限するルールを厳格に設けていました。しかし、あまり教育に熱心ではない親が集まる地域ではそういったルールを設けず、どうしても子供がタブレット漬けなってしまうということがありました。
そういったこともありまして、その地域全体の教育委員会が、子供にアイパッドを配布する学年を遅らせて、低学年の子供は先生とのやり取りを中心にすることにしていました。
なお、その地区の学校では、今年度はコロナのため全面的にオンラインになりましたが、それでも、オンラインのみにするのではなく、従来の紙ベースの学習も織り交ぜているようです。年度の最初に各児童に段ボール1箱分の、英語・数学・サイエンスなどの科目のプリントが支給され、オンラインでの授業も、紙を用いながら進めています。
2.家庭環境による教育格差、学力格差が開く可能性
また、オンライン教育の問題点の2つ目は、特に今年のコロナ感染のなか否応なく教育がオンライン化されたような場合、それに対応できる家庭とできないとの差が出てしまうということです。
あるいは、それに対応するだけの財政力のある国・地域間でも差が出てきます。
家庭レベルで見ると、オンラインに対応するのが難しい家庭では、残念ながら、子供の能力開発が遅れてしまいます。例えば、Wi-Fiなどのインターネット環境が不十分だったり、学習に必要なアプリやソフトウェアを準備できない状況にあったりすると、どうしても子供たちの能力開発が遅れてしまいます。
この点について、先日、アメリカの公立中学校の教師をしている義妹と話し合う機会がありました。義妹の学校はニューヨーク市に近い地区にあり、コロナのため今年度は基本的にオンラインで行われています。彼女によると、オンライン自宅学習になると、それに対応できる家庭環境にある子供にとっては、高度な教育をどんどん受けられますが、インターネット環境が整わない低所得家庭の子供は追いつくのが難しいということでした。彼女の学校の方針は、この今年度はオンラインで生徒の自由度を増した形でゆったりと教育を進めるけれど、来年度以降はキャッチアップしなければいけなくて、残念ながら、来年度以降に落ちこぼれてしまう子供が出てきそうだということです。
このように、教育のオンライン化・テクノロジーの導入には、良い面もあり、また、解決すべき問題もあります。
それでも、世界的に見て、教育のオンライン化やテクノロジーの導入の進行を止めることはできず、私たちはどのように付き合ってゆくかということになります。
次の記事では、教育のオンライン化が社会や経済全体にどのようなインパクトを与えるかについてお話しします。