前回の記事でで、ジェンダーステレオタイプ、つまり、「女の子はこうあるべき」、「男の子はこうあるべき」といった社会からの期待や価値観が、子供の成長にどのような影響を与えるかについてお話ししました。
この記事は、 子供が直面するジェンダーステレオタイプに対して大人ができることとして、子供が読む本の役割についてお話しします。
先日、ある自己啓発セミナーに出たところ、講師からこんな質問ことがありました。
それは、「今まで読んだ本の中で、自分の人生に毒になったり、悪い影響を与えた本を挙げてください」というものでした。
興味深かったのは、女性の参加者の多くが、シンデレラや白雪姫といった「お姫様絵本」をあげていたことです。シンデレラや白雪姫のようなお姫様絵本は、容姿に恵まれ美しく若い女性が最終的には王子様に見出されて幸せになる、あるいは、国王の娘(プリンセス)として特権階級に生まれた女性は特別に幸せになる、というメッセージを発しています。そのメッセージの裏側にあるのは、「女の子は、身分が高かったり、容姿が美しいということが好ましい」という価値観です。
こういった価値観が幼少時から織り込まれてしまうと、努力や能力開発や達成よりも、可愛らしさや美しく装うことが重要、と女の子たちは考えてしまうのではないでしょうか。
実は私も幼稚園くらいの頃、シンデレラなどのお姫様ストーリーを読んで育ちました。私は当時服飾デザイナーになりたかったので私の関心の主なものは洋服のデザインでしたが、それでも、お姫様絵本を読む過程で、探究心や知的好奇心や問題解決力よりも「可愛らしいのが素晴らしい」という価値観が無意識のうちに入り込んでしまったと思います。
そして、私は10代半ばの思春期の頃になって、幼少の頃読んだシンデレラなどの絵本が、自分自身にどんな影響を与えたのか、やっと気づきました。同時に、シンデレラなどを読まず、女性も男性も同じように活躍できるのだというような価値観で育っていたら、私はもっと可能性を開花できたに違いないと悔しく思ったものです。(まあ、当時の強烈な悔しさが、その後の努力のバネになった訳ですが)
残念ながら、 現代の子供向けに作られた本でもジェンダーステレオタイプにさらされた本は少なくありません。
しかし、幸いなことに、現在では、伝統的なジェンダーの価値観を排してより多様な生き方を提示する本が沢山あります。女の子にはより自分の力で人生を切り開い切り開けるような本、男の子には従来の「男らしさ」という価値観ではなくてもっと柔軟に生きられることを教えてくれるような本です。
また、現代の女の子にも「お姫様絵本」は依然として人気ですが、最近のお姫様の絵本やストーリーは、自分で勇気をもって立ち向かうような主人公であることも多いです。例えば、「モアナと伝説の海」などです。
ただ、私個人としては、そういう「新しいタイプ」のお姫様ストーリーであっても、やはり、生まれながらの身分をフルに活かして活躍する女性のお話ですし、そこから派生して「シンデレラ」などに娘の関心が行ってしまう可能性もありますので、私の娘には、積極的には見せたり読ませたりはしていません。(もちろん、今後、娘自身がそういったストーリーを好むなら、それを受け入れますが)
こちらの記事は、どういった本があるのか(女の子を勇気づけるような本、男の子もより柔軟な生き方をするという価値観に基づく本、パパと子供が楽しめる絵本を紹介しています。
https://yokoshinagawa.com/l/u/DhzJfASCPWdJOvT5
また、私が主宰する子育てサークルで、そこに出席していた方から「ぼくのママはうんてんし」(おおともやすお著、福音社)という本を紹介されました。運転士の母親と看護師の父親という家庭に育つ子供のお話しです。素晴らしい内容で、幼少期から小学校低学年くらいまでのお子さんをお持つご家庭に是非勧めたいです。(そこに出てくる子供は保育園児ですが、共働き家庭の悩みや嬉しさを表現した内容で、保育園・幼稚園児だけに限定するのは勿体無いです。大人をも感動させる本です。)
次回の記事では、ジェンダーステレオタイプに対して親ができることの続きをお話したいと思います。