女性の家庭内家事労働: そのとてつもない価値

多くの女性が行っている家事や育児といった家庭内の家事労働、商売やビジネスなどの経済活動と同等(あるいはそれ以上)の社会的な価値があります。この記事では、女性の家事労働の価値をもっと認められることは、女性にとっても女性の家族にとっても、ひいては社会に大きな恩恵をもたらすというお話をします。

多くの女性が、家庭内で料理や掃除といった家事や子育てや介護を担っていて、それは家庭内家事労働といわれます。もちろん、家事を担当されている男性もたくさんいますが、現状では日本を含むほとんどの国で女性の方が多くの家事労働を担っていますので、ここでは「女性の家事労働」と言うことにします。世界中の多くの女性が家庭内で無償の家事労働を行い、家族にサービスを提供しています。

こういった家庭内の家事労働を他の人を雇って行うと、私たちはそのサービスに対してお金を払い、経済活動とされ、国内総生産(GDP)の一部になります。例えば、家庭料理の代わりにお寿司やピザの宅配を頼むと、サービスを買うことになり、お手伝いさんを雇って家の掃除や子供の世話をしてもらうと、お手伝いさんにお金を支払います。介護士に老人介護を頼むと、介護士に対価としてお金が支払われます。

ところが、家庭の中で家の人ー女性ーが家事労働をして家族にサービスをしても、GDPに入りません。

いま、多くの女性が、家族にサービスを提供し、家族を幸せにすることで、社会をより良いものにするという大切な役目を担っています。私は、家事労働も他の人のためにするサービスなので経済活動とされるべきであると考えますし、多くの経済学者もそう考えてきました。実際、この家事労働は、日本やドイツなど先進国でGDPの5%から10%程度になると言われています。アフリカの発展途上国などでは、服を洗濯したり料理をするための便利な電化製品やテクノロジーを買うお金がないことも多く、多くの女性が手で洗濯したり、大勢の家族の面倒をみて多くの時間とエネルギーを使っている、そういった国では女性の家事労働はGDPの40%ー50%くらいになるという研究結果もあります。

家事労働がGDPに含まれていない一つの理由として、経済活動と認識されていないということの他に、一体どれだけのサービスが提供されているのかを計算するのが難しい、ということがあります。

例え難しくても、私は、家事労働は経済活動に本来含まれるはずの経済活動、サービスであるということを、もっと多くの人に知ってほしいです。なぜかと言いますと、そうすることで、現在多くの女性がしている家事労働を、家庭のなかで分担したり、工夫して効率的に家事を行えるようにする、ということができやすくなり、世界中の多くの女性がもっと幸せに生きられるからです。そうすると、女性が自由に使える時間が増え、女性のキャリアや可能性をもっと高めるために時間を使えます。これは、女性だけではなく、家族、ひいては社会全体にとってとても良いことです。

このことを、特に女性の配偶者・パートナーや家族に知ってほしいです。自分のやっている家事労働は実は社会的に貴重な価値のあることだと女性自身が認識すると、自分にもっと自信を持ち自己肯定感も高まると思います。そういった自信が、その女性が家庭の外で働くときに居力な武器になります。また、配偶者やパートナーや子供にも知ってもらうと、家庭内で女性だけが家事労働を担うのではなく、家庭内で分担したり、効率化を図ったりできます。

少子高齢化時代に突入し多くの女性が働くようになった今こそ、家事労働とは何か、どんな価値を生み出すのか、ということを考えたいものです。


Photo by Annie Spratt on Unsplash