子育てー特に子供が小さい頃の子育てーにおいては、正しい情報は大きな力になる。正しい情報を持っているかどうかが、子供の成長やその後の人生に大きく影響与え、また親自身も子育てが楽になり子供との関わりを楽しめて親子関係もずっとよくなる。その理由としては、一つは、子供は多くの場合、段階的に発達して年相応の発達を遂げると言うこと、二つ目は、子供の行動には発達上の隠れた意味があり、それを知らずに親が苛立ってしまうと親にとっても子供にとって悪影響がありうること、三つ目は、発達障がいの子供の場合には親の情報が特に決定的に重要でありうること、である。
それでも、やみくもに情報があれば良いのではなく、正しい情報でかつ立証されている情報を持つことが重要になる。
子供の行動は発達上予測可能なことが多い。
子供は、多くの場合、段階的に発達し、子供の行動(いたずらといった親を困らせる言動も含めて)は、通常は発達段階に応じて予測可能なことが多い。
子供が年齢ごとにどのような発達をするのかについての正しい情報を持つことにより、親はより安心できて、不安が軽減できることが多い。例えば、なぜ2歳児は癇癪をおこすのか、なぜ6歳児は親の言うことを完全に無視するのか、11歳の子供は大人になる準備段階としてどのような発達を遂げているのか、といったことについて、大人は理解できずに怒ってしまうこともある。でも、それは発達上必然的行動だとわかれば、より子供の視点でものを考えられるようになったり安心することも多々ある。
とはいえ、子供には個人差があり全ての子供が本に書いてある様子そのままに育つのではない。一般的な情報や育児書が全ての子供の発達の全体像を示すわけではないものの、おおむね、子供は年相応の発達をする。
実際、正しい情報によって、親も子育てが楽になるし、子供にもメリットが大きい。私の経験に照らしても、正しい情報は私に力を与えてくれた。私は子育ての経験が無く子どもの発達についても知識がない状態で母親になった。異国の地で頼れる家族もおらず、夫は海外出張で一年のうちトータル3か月近く不在にしていたので、私は基本的にはほぼワンオペで育児をしてきた。それで、私は幸いだったのは、子供が小さいころから多くの児童発達の専門家に出会えたこと、そしてそうした方々から色々教えてもらったり、育児書の良書を推薦してもらったりしたことだった。例えば、私は第一子が一歳過ぎた頃にToddlerといわれる幼児、幼児期特有の行動子供が取るようになった(ちなみに、日本語では「魔の二歳児」「イヤイヤ期」、英語では「Terrible Two」と言われているので、この時期の親の戸惑いは万国共通だ)。それで、私は幼児期の行動や発達についての本を読んで、子供の発達についての正しい知識を得られたことがとても助かった。なぜ子供は「No‼(「いやだ!」)と言うのか、なぜ子供は何でも自分でやりたがる一方で母親を常に求めるのか、といったことを知り、私は子供への関わり方を考えるヒントを得られた。私が当時のあの時期を乗り越えられたのは、ひとえに正しい情報があったからだと思う。
2. 子供の行動の裏ある発達上の重要な意味
子供の行動の裏には、発達上の重要な意味が隠されていることが多い。その発達上の意味をある程度理解した上で子供に関わることで、子供の自己肯定感が高まるなどの効用も大きい。
例えば、幼少から小学校低学年にかけての子供は言葉を「文字通り」に受け取り解釈する。もし親が買い物中に、「それ触っちゃっだめよ」と言うと、子供は「それ」と言うものが、たまたまあったイチゴだけを意味すると思う。ところが、親にとっては、「それ」はお店に並んでいるもの全て。したがって、子供がその商店で、イチゴ以外の他の物を触ろうとする、親はとても怒るかもしれないが、子供にとっては、親の言うことを文字通り聞き入れただけのこと。
子供は、それぞれの言葉が実際の生活や文脈のなかでどのような意味を持ちどんな行動・動きを示すかを吟味・審査していて、可能な限りのパターンを探している。いわば、脳内のファイリングシステムを構築している最中で、それは子供が9歳から10歳になった時に完成する。なので、私たちは、子供に、例えば「今日はお客さんが来るから、良い子でいてね」と言っても子供にとっての「良い」という概念とは異なるかもしれない。したがって、子供に対して、どのような行動がこの場合「良い」となるのかということを子供に説明する必要がある。
こういったことを理解せずに、子供が大人のことを理解しているようにしているという前提に立って話してしまうと、子供にとっては自分自身が理解力が劣っているという感情が芽生えてしまい、自己肯定感が傷つきかねない。
3. こどもが発達障がいを持っている場合、親の情報の有無がカギを握る
「子供はおおむね年相応の発達を遂げる」を言うと、発達障がいの子供は定常の発達を遂げないのだから、そういった一般的な情報は無意味だと言われるかもしれない。しかし、そういうお子さんを持っている親御さんほど、正しい情報が必要だ。
特に、いわゆる特別な支援が必要な子供(自閉症や発達障がいなど)を持つ場合は、正しい情報が必要な状況だと思う。
現在では、自閉症や何らかの発達障がいを持つ子供は、早い場合は生後6ヶ月前後からの兆しを見せ、いわゆる療育や特別な支援は早ければ早いほど良いとされている。療育をすぐに受けられなくても、親がその子供にとって相応しい関わりをすることによって、その子供のその後の症状やコミニケーションスキルなどがだいぶ改善されることも多い。
私の身近で幼少期から自閉症ないし発達障がいと診断された家族・友人・知人がいたが、親の親の反応は異なっていた。例えば、私の身近にいる複数の人は、子供が自閉症や発達障がいの症状を早くから示していて小児科医などから、専門機関に行くようにアドバイスされていたにもかかわらず、これは個人差の問題でこの子供には何の問題もないと信じていて、何の対処もしていなかった。結果的には、その子供3歳過ぎて自閉症ないし発達障がいと診断され、その後療育を受けるまでに非常に時間がかかった。遅れれば遅れるほど、子供がそのポテンシャルを引き出せるチャンスは失われてしまう。逆に、私の知人心理学や子供の発達に知識や造詣があった方は、子供が自閉症の症状兆しがあると発見できて、早くから療育を始めることができた。
このように、親が子供の発達について正しい知識を持つことは、子供の成長やその後の人生に大きく影響を与え、親自身も気が楽になり子育てをより楽しむことができる。
ただし、やみくもに情報があれば良いとのではない。特に、児童発達については定説があるものの、親が実際にどのように関わるべきかという育児スキルについては、多種多様な情報がある。そういった情報を手に入れる前に自分が目指すものは何か自分が正しいと思う価値観は何かをまず明らかにすることや、信頼でき立証された情報をつかみ取ることによって、親も子も大きなメリットがあると私は考えている。今後、ブログを通じて、どのようにそれを実現させるかということや、子供の可能性を伸ばせて親自身もより楽しく子供に関われるような世界的に実証されている情報を、今後このブログで発信してゆきたい。
参考文献:
Bailey「Easy to Love, Difficult to Discipline」
Davis and Keyser「Becoming the parent you want to be」
Photo by vivek kumar on Unsplash