お金をもっと賢く使えて、ビジネスにも役立つ!フリー(無料)エコノミーのはなし

「賢いヤツは、フリー(無料)のものをもらうんだ!」

これは、10年以上前に私がアメリカの大学院で教わった、経済学の教授が言っていた言葉です。(その教授は、無料でもらえるものが大好きで、新学期が始まる頃に色んな教室で出される無料のピザやサンドイッチを食べ歩いていました。)

私達の周りには「無料」のものであふれています。例えば、無料で読めるネットサイト、YouTube、化粧品の無料サンプル、無料のスマホアプリ、一つ買うともうひとつ無料でもらえるモノ、などです。

ただ、無料のものもらえたとしても、どこかで私たちがお金を払っていることが実は多いのです。

ですので、無料でモノ・サービスを得られる「フリーエコノミー」の仕組みを知ることで、消費者としてより賢くお金を使えるようになります。また、こちらのメルマガの読者の方には起業家あるいはこれからビジネスを始めようとしている方も多いのですが、自分でビジネスをする時にも、フリーエコノミーについての知識は役に立ちます。

フリー(無料)の4つのタイプ

では、フリーにはどんな種類があるのでしょうか。大きく分けて4つあります。

①直接的内部相互補助

これは、「これを買うと、もうひとつ無料でついてきます!」というキャンペーンのように、企業が特定の商品を無料かそれに近い値段にし、それでお客さんを呼び、ちゃんと利益を出せる他の商品を売るというものです。

消費者側としては「無料のものをもらってラッキー」と思うのですが、実は消費者全体でみるとちゃんとお金を払っているということなのです。 

誰しも、特売セールのときにお店に行って結局は特売以外のものも買ってしまった、という経験があるのではないでしょうか。

これはオンラインではない物理的な店にお客さんが出向くから成り立つケースが多いですが、オンラインでも、「無料」キャンペーンを張りつつ「3000円以上の買い物で送料無料」などとした場合に使えるのではないでしょうか。

 ②三者間市場

テレビ(コマーシャル付きの民放番組)、雑誌・マガジン(オンラインでもオフラインでも、広告のついたもの)などがその代表例です。

消費者、製造者(テレビ局など)、広告主の3者が存在するので、こういう名前になっています。

確かにそのテレビを見たり雑誌の内容を読んだりするのは無料なのですが、それでも消費者がその広告やコマーシャルにつられて物を買ってしまうので、こちらも上の例と同じように、消費者全体でみるとその広告を主に対してお金を払っているということになります。 

③フリーミアム

これは、企業が有料のプレミアム版を販売する一方で、それ以外のユーザーには無料で提供するというものです。 これは特に オンラインでサービス提供している場合によく見られることです。

なぜこういったことがオンラインで可能なのかと言いますと、化粧品のサンプルなどとは違って、オンラインの場合にはコンテンツを見込み客に無料で提供することの追加的なコストがほとんどゼロだからです。

こういったフリーミアムサービスを提供している業界全体でみると、お金を払っている有料ユーザーは5%で、その5%の人たちが95%の無料ユーザーを支えていると言われていますす。

例えば、私はマイフィットネスパル(MyFitnessPal)と言う健康・ダイエット系のアプリを使っています。このアプリには無料プランとプレミアムプランがあり、無料ですと広告付きで利用できるサービスも限られているのですが、プレミアムプランは広告なしでより充実したサービスを受けられるようになります。

私は現在1ヵ月お試し版プレミアムプランを使っているのですが、このままプレミアムプランにするかあるいは無料に乗り換えるか思案しているところです。

私がこのプレミアムプランの年間49.9米ドルを払った場合、私のお金が大部分の無料ユーザーをサポートすることに使われるので、自分のお金をそのために使いたいのか、そこまでしてプレミアムプランは価値があるのか、ということで悩ましいです。

④非貨幣市場

これは、お金と言う対価を期待せずに、無料でいろいろなものをシェアするものです。

贈与経済(ギフトエコノミー)などとして最近広がってきた考え方です。寄付など全くの無償サービスということもありますが、他方、サービスを受けた側(消費者)が無料で何かを得て、それが口コミやオンラインレビューなで評判が高まり、その製造者がよりビジネスとして成長できるというものです。 

例えば、アメリカの首都ワシントンDCにスミソニアン博物館群があります。スミソニアンは複数の博物館や美術館、動物園などからなっていますが、入場料は無料です。主に寄付で成り立っていますが、評判が評判を呼び「スミソニアン」としての名声が確保されているので、スミソニアンの運営側としては、関連商品からの収益や更なる寄付金増などがあり、無料入場料で成り立っているのです。

フリーの世界でより良い選択と行動ができるために、知っておきたいこと

このように、現代においては「無料」で得られるものは数多くあり、一昔前の「タダほど高いものはない」ということは成り立たなくなってきています。

では、私達は消費者として、この「無料」の世界を享受してより良い選択を行うには、どうしたら良いでしょうか。

それは、「無料でいただくのは申し訳ない」という思いを捨てて、無料のサービスを心置きなく享受できる世の中になったのだと知ること、そして、「無料」の影に潜む隠れたコスト(例えば、ついつい広告や「無料セール」で余計なものを買ってしまうこと)に気をつける、ということです。

ビジネスをしている場合には、世の中のニーズに沿って無料で消費者に価値提供する一方で、どのように収益をあげて持続可能なビジネスモデルを構築するか、ということです。参考図書にも挙げている、アンダーソン著「フリー」では多くの「無料」ビジネスモデルの例があるので、参考になるかと思います。

それでは!

参考図書:クリス・アンダーソン著「FREE フリー 〈無料〉からお金を生み出す新戦略」(NHK出版)