先日、「子供のレジリエンスを高めるにはどうしたら良いか」という質問をいただきました。
この記事も含めて3回に分けて、親が子供のレジリエンスを高めるためにできることについて書きます。
レジリエンスとは
まず、子供にとってのレジリエンスとは何でしょうか。
レジリエンスとは、私たちが経験する様々なストレスや失敗や不遇やチャレンジやトラウマから回復できる能力で、基本的には、子供が成長するにつれて獲得するスキルです。
レジリエンスの高い子供は、自分のコンフォートゾーンから出て挑戦したりリスクを取ろうろし、好奇心が高く、自分の直感や本能を信じて行動することができます。さらには、長期的な目標に向かって何かを達成したり自分自身で問題を解決することができます。
(レジリエンスの定義は、アメリカの心理学者・著者のKatie Hurleyより)
親が出来ること
では、子供が自身のレジリエンスを高めるために、親ができることは何でしょうか。
まず重要なことは、子供との感情的な絆を深め、子供が子供に応じ親からの無条件の愛愛やサポート感情的なサポートを与えることで、子供にとって内的な安心感を得られることができ、それが自信や自己肯定感を育み、レジリエンスの向上につながります。
そのために親が出来ることについて3つ書きます。
1.親子の絆を深め、安心感を与える
1つ目は、子供との一対一の良質な時間を持ち、子供との絆を深め、子供に安心感を与えることです。1日5分でもそれを行うと(あるいは、中高生以上のお子さんなら、一週間に一度でも)、随分違ってきます。
親は、子供と一緒に過ごしていても実は子供の感情に向き合っていないことが多いです。例えば、子供と一緒にいるときにスマホをいじっていたり、「親が良いと考えていること」を子供にさせようとした経験はないでしょうか。「親が良いと考えていること」は、玩具(教育的に良いとされる高価な玩具を買って、子供にそれを使って遊ばせようと必死になる状態)、考え方(親が子供にピアノを習わせようとしていて、ピアノの良さを説いているなど)など様々です。
そうではなくて、親子の良質な時間を使って、子供のありのままの気持ちや感情や子供の興味関心を親が受け入れている、ということを示すことです。そうすると、子供にとっては、親が自分自身や自分のやりたいことを受け入れていると感じ、より一層子供自身の興味関心を追求し、いずれは外に向かってチャレンジも出来るようになります。
2.無条件の愛
2つ目は、子供に無条件の愛情を与えることです。無条件の愛情とは、子供が親のアドバイスを聞き入れず未熟な選択をして失敗しても、怒りと言ったネガティブな感情を持っていても、それを受け入れて愛し続ける状態です。
ここで注意していただきたいのは、親がいくら無条件の愛情を内面で持っていても、間違った形で表現してしまい、子供にとっては「ママ(パパ)は、僕が良いことをした時だけ受け入れてくれる」と考えてしまうことが少なくない、ということです。
例えば、子供に褒めるとき、「テストで100点とって、凄いね。あなたは頭が良いね。」と言ってしまうと、子供の努力といったプロセスではなく「100点」という結果だけに注目しているというメッセージを送ってしまいます。そうすると、子供にとって「親は、テストで良い成績を取った時だけ自分を認めてくれる」と感じてしまうのです。
また、子供が怒りやフラストレーションといったネガティブな感情を持っている時に、それを親が受け入れるのは難しいことが多く(特に、幼少の子供が怒ると親を叩いたりモノに当たったりするので)、親は子供の感情を否定してしまいがちです。他方、子供がハッピーな状態でニコニコしている時には、親は普通、子供を全面的に受け入れます。すると、子供にとっては、「自分がニコニコしているときはだけ親が自分を受け入れてくれる」と感じてしまいます。
そうではなく、子供が怒っている時には、子供の内面の気持ちをくみ取って共感を示し、「お友達の〇〇ちゃんが本を貸してくれなかったから、あなたは怒っているんだね。」などと言うと効果的です。子供の怒りを受け入れるというのはとても難しい育児スキルで、親の側にもセルフコントロールが必要ですが、子供の内的成長やレジリエンスの向上のためには、非常に重要です。
3.評価しない
3つ目は、褒めるときに子供を評価しないということです。
上の例で、親は「テストで100点とって、凄いね。あなたは頭が良いね。」と言いました。親が子供に対し、日頃から「頭が良い」といった評価的なコメントをしてしまうと、子供にとってはそれが重荷になり、常に「頭が良い」という評価をされるように振舞わなければならない、という風になります。
すると、次第に子供はリスクを取りたがらなくなり、レジリエンスを高めることも困難です。なぜかと言いますと、リスクを取って新しいことをして失敗し、「頭が良い」状態でなくなるのを恐れるからです。
また、子供は、親が「頭が良い」という「条件付き」で愛してくれていると感じてしまい、心理的安心が得にくくなります。
このように、子供のレジリエンスを高めるためには、親子の絆を深め子供に心理的安心を与えることが大切です。子供と良質な時間を取って向き合ったり、無条件の愛情を与えたり、子供を評価することを避ける、ということにより、子供にとっての心理的安全を与えられます。
なお、ここでお話しした育児スキルやアプローチは、決して簡単なものではありません。これを行うにはふつう、練習や試行錯誤が必要で、何よりも親にとっての自己コントロールが求められます。実際、私も特に3歳の末娘に対しては難しいこともあり、夜になって「これで良かったのか、もっと違うふうにできたのではないか」と自己反省することもあります。
ですので、これを読んで「自分は出来ていない」と思われた方も、気にせず、できるところから実行されてはいかがでしょうか。